「現代のことば」<2>
京都と大阪――。新幹線なら僅か15分の距離なのに、ここに住む人々の意識の違いには大きな隔たりが存在します。まるで異国の地と言えるほど。(実際、山城国と摂津国ですもんね)
大阪人の私が京都で仕事をするようになった頃、よく聞かされました。「京都で『よろしおすなぁ』と言われても、ええ気になったらアカン。その人の表情や、言葉の裏側で、ホンマにええのかどうかを察しなさい」と。
この差異は、いつから生じたのでしょう。かつら天皇家の住まい(御所)があることから、京・大阪およびその周辺が「上方(カミガタ)」と呼ばれるようになりましたが、大阪人が「上方」を多用するようになると、京都の人は上方という文言を使わなくなったのです。「上方料理」が「京料理」に、「上方舞」が「京舞」に変わりました。唯一、共用しているのは「上方落語」くらいなか・・・いや、これとて京都人は「こっちの噺」と言うてるかもね・・・。
其の上方落語は京都人と大阪人の意地の張り合いが少なからず描かれています。『愛宕山』『京の茶漬』『三十石』『はてなの茶碗』・・・。あっ、意地を張ってるのは大阪人だけですね。京都人を毛嫌いする大阪人。そんな大阪人を全く相手にしていない京都人。
この感覚は東京の人にはなかなか分かってもらえません。逆に言えば、この感覚が理解できたら(敢えて言いますが)上方の通人になれるのです。
そこで今日は、私が長年の経験から感じ取った「言葉のアクセントによる京都人と大阪人の見分け方」を伝授いたしましょう。(傍点部分は高く発音してください)
1.おおきに。大阪人は「おおきに」と、「お」と「き」を強調しますが、京都人は「き」だけを強めます。
2.見ました。大阪人は「みました」と、「みま」を上げますが、京都人は「みました」と「み」だけ上げます。
3.水色。大阪人は「みずいろ」と、平板で言うのに対し、京都人は「みずいろ」と、「ず」だけ上げます。
4.東京へ行く。大阪人は「とーきょーへ行く」と言い、京都人は「とおきょおへ行く」。
5.しない(否定)。大阪は「せえへん」、京都は「しいひん」。
いかがですか。なんだか・・・どうも、私は素直な性格ではないようですね。強引に自分とのズレを見つけては、侮蔑するのではなく、一人ほくそ笑む姿など、本当は好きなのになかなか恋人に心を打ち明けられない『メリー・ウィドウ』のハンナとダニロのようです。
もうしゃあない。はっきり言いましょう。私は京都大好き人間です。ときに“上から目線”の京都人の言動に閉口しつつも、大阪にはない京都の真髄に出逢えた時の喜びは、天にも昇るほど!京あればこその日本文化――よろしおすなぁ・・・いや、ホンマに。