「言いたい放談」<8>(2007年7月20日)

満員御礼――、この言葉ほど芸人にとって嬉しいことはありません。元気百倍!でも最近、割とゆったり感じる「満員御礼」によく出くわします。補助席も立ち見もなし。ときには前売りを買ったが当日来られなくなる人の空席が目立つ日もあります。

理由は消防署による行政指導。火災時の避難経路を十分確保せねばならないからと、補助席も立ち見も出さない方向へと動いているのです。条例では、施設の規模などにより必要な通路幅が定められていますが、細かな裁量は消防署員任せなので、コロコロ変わる基準に劇場側はオロオロするばかり。

どうもこの方向性は「文化」と逆行しているように思えて仕方ありません。観客が溢れてこそ舞台はさらに盛り上がるのです。

ただ、補助席が置けなくなりつつあるもう一つの理由に、お客さんによる通報があります。「通路側の席を買ったのに、来てみたら横にパイプいすが置いてあって、大きなオッサンがすわってる。消防法違反とちがうか」と電話が入る。通報されたからには指導に行かねばなりません。

確かにお客さんの気持ちも分かります。それ以前に、人命尊重は第一。消防署の方々のご苦労は大変なものです。けど、大入り興行の魅力も分かっていただけたらなぁ。

そこで、どうでしょう。一度、都庁の職員と劇場支配人と芸人が膝突き合わせて相談し、すべての劇場の基準を明文化するというのは…。邪魔にならない補助席の配置場所、立ち見の人数枠をはっきり決めて、避難訓練を義務づける。これぞ文化行政の役目では?