「言いたい放談」<20>(2008年2月15日)
「新宿村」ってご存知ですか。芝居の稽古に使ったり、写真の撮影に使える大小42もの部屋を有する創造空間なのです。
芝居の稽古には多くの時間を要します。でも、経費はかけたくない。そこで皆、必死になって安い稽古場を探すのです。墨田区や江東区にある倉庫スタジオも舞台人の間ではよく知られていますが、副都心にある稽古場は何と言っても地の利が魅力。
地下鉄・西新宿駅と中野坂上駅の間に位置する新宿村。お世辞にも綺麗とは言えぬ表構え・・・いや、第一どこが表か分かりません。広い空地の一隅にがさつに建てられたコンクリートの塊。しかし、なぜか愛着がわくのです。ものを生み出すにはもってこいの場所。
実は私、現在(コラム掲載当時2008年)ここに通っています。大阪松竹座三月公演の「紫式部ものがたり」(斎藤雅文脚本・宮田慶子演出)のお稽古で・・・。「えっ、大阪の芝居を何で東京で」と思う人もありましょうが、役者やスタッフのほとんどが東京住まいである今日、全国の商業演劇は東京での稽古が当たり前。それだけに、稽古場の存在がますます重要となるわけです。
ちなみに、今回の主演は大地真央さん。そこに酒井美紀さん、神田沙也加さんといった美女が加わり、村は華やぎに満ち溢れています。
ただ、この周辺は再開発の真っ最中。マンション建設などで、スタジオがどんどん削られ、仮設のバラックへと追いやられています。先行きを尋ねたら、「大丈夫。数年後には立派な新宿村にしてみせます」。頼もしい返答にホッと一息。稽古場は舞台人の隠れた命なのです。