小米朝流「私的国際学」<14>(2001年4月7日)
ひょんなことから、今年度よりNHK教育テレビの『ドイツ語会話』に出演することになった。毎年4月になると、私は書店でいろんな外国語のテキストを買いあさり、「今年こそモノにするぞ」と意気込んだものである。いつも5月号で終わっていたが・・・。
今年は強制的に6月以降も続くから心強い。落語より独語のほうが上達しそう。ちなみに、放送時間は週1回の早朝だ(再放送は別枠)。多岐にわたる英会話番組に押されて、あまり目に触れないのが実情だ。
何と言っても、今や英語の世の中。話せて当たり前の時代。そのため、乳幼児から英語を教える家庭が増えてきた。0歳からのバイリンガルを実践する塾もある。
「だが待てよ」と私は思う。そこまでする必要があるのかと・・・。実際、私の知り合いの外国人はおしなべて「まず、母国語を教えなさい」と力説する。母国語が確立しないうちに外国語を覚えると、思考が不安定になるとか・・・。例えば、日本人の子供が親の仕事でアメリカに住み、〝学校では英語、家では日本語〟という生活を続けて帰国した時、自信を持って喋れない状態に陥るのだそうな。
国際結婚で生まれた子供は、どちらの言葉にも精通しているが、彼らでも母国語はどちらか一方に決めている。そうしないと論理的な会話ができなくなるらしい。
多くの英会話教師が、「きちんと日本語の話せる人になれ」と言う。たとえ英語が流ちょうに喋れても、自分の考えが組み立てられない限り、結局は話せないのと同じことになってしまうのだ。
たまに行う私の講演のテーマは『国際人って何?』。その論旨は「日本の良さを日本語でいいから(できたら英語で)話せる人こそ国際人」。
来年度から教育改革。もちろん小学校での楽しい英会話も大いに結構だが、〝読み、書き、そろばん〟こそ、学びの基本だよ。