小米朝流「私的国際学」<22>(2001年6月2日)

「緑色の花があるって信じられる?」。こう訊かれた時、私は一笑に付した。「青いバラを作るのにも四苦八苦しているのに、緑色の花なんてあるわけない「と、全く相手にしなかった。

だが、あったのだ!パイナップル科の「プヤ」という植物。一本ヒョロッと伸びた茎から、緑色の花が十ほど咲いているではないか。5、6年に一度しか咲かないとされているアンデス地方のプヤが開花した。しかも大阪で・・・。

所は、大阪府交野市にある大阪市立大学理学部付属植物園。大学の所有だが、一般公開している。この辺りは生駒山に連なる河内の森。近くには、くろんど自然公園や磐船神社があり、時空を超越できる場所とも言える。昭和25年、植物園は大学の研究施設としてこの地に発足し、以来、大阪で生育しうる限りの植物を世界中からどんどん取り寄せた。今や、4500種を数えるという。

全体は25の見どころに分かれている。常緑広葉樹林や落葉樹林や水生植物エリアなど・・・。でも、切った貼ったの植え替え式ではなく、河内の森にしっかりと苔むして根付いているのだ。ここは都会の喧騒を忘れさせてくれる。ふと、メタセコイヤの森に遭遇したり、ササユリの群生に心を和ませたり・・・。歩くだけで癒される。これぞ本当の財産ではないか。

奥深い森林を散策した後、もう一度プヤの前で立ち止まる。小さな蘭のような花びらは間違いなしに緑色。森林が財産ならプヤは翡翠色に輝く宝石だ。見れば見るほど不思議な気になる。

秘宝の見どころは6月中旬までだとか・・・。でも、本当はあまり知ってもらいたくない。自然に近い森であり続けてほしいから。