桂小米朝の「新・私的国際学」<21>(2003年8月31日)

劇団四季のミュージカル『美女と野獣』を見てきた。実は、8年前に東京と大阪で行われた日本初公演にも足を運んでいる。そのときは4回観た。ディズニーのアニメがそのまま具現化された舞台美術と、アニメ以上に夢々しい音楽に魅了された。ベルという名の美女をもてなす曲「ビー・アワ・ゲスト」が始まると、私も一緒になって口ずさむ。

今回は、京都劇場でのロングラン。見るたびに、私はこの作品のとりこになってゆくようだ。なぜ、かくも足しげく劇場へ足を運ぶのか・・・。この作品には、人を愛することの切なさ、尊さがしっかりと描かれている。

わがままな性格のため、魔法使いによって醜い野獣の姿に変えられた王子。もとに戻るには、バラの花が散るまでに王子が愛する心を取り戻し、そして相手からも愛されなければならぬという。そこへ、ベルが迷い込んで来るのだが・・・。

特筆すべきは、ベルに恋した王子が彼女に向き合ってもらおうと必死になるシーン・・・。ベルのために尽くそうと、相手の気持ちに立って行動するのだが、意思の疎通がはかれず、心を痛める。だが、決してそれを口にしない。

私は、ハッとした。「おれはというと・・・いつも自分のことしか考えていない。野獣以下や」

すぐに言い訳を口にする自分を恥じた。改心した野獣の何とカッコいいことよ!美女と野獣のセリフのやりとりに、終始涙がこぼれた。

やがて、野獣がベルを立派な書斎に案内し、彼女は大感激。「何かが変わった」という曲の中で、二人は急速に接近する。が、しかし野獣は彼女を愛するがゆえに彼女を父親のもとへ返してしまう・・・。

本当に人を愛すること、それを教えてくれるミュージカル!カップルでも、家族連れでも、もしくは一人で見ても、大きな感動を受けるに違いない。