「言いたい放談」<5>(2007年6月8日)

21世紀、人は物質的豊かさの追求に行き詰まり、精神世界の重要性に気づき始めました。

スピリチュアル――、魂の尊さを伝えるテレビ番組の急増。20世紀には考えられなかったことです。少し前まで心霊現象はすべて「オカルト」でした。もちろん、今でも一を感じて十を語る怪しい人は数多くいますが、人気を博する霊能力者の登場により、「霊界」が身近な存在になりました。

これに対し、霊界など信用しない人が大勢いることもまた事実。私もその一人でした。唯物史観的な教育を受けたからでしょうか。しかし、ある時、先輩の枝雀兄さんから「死後の世界はあると思うで」と聞かされました。「人間、無から有になったのなら無に返るやろうけど、われわれは父親の種と母親の卵からできたんや。つまり、有から有になったんやから、死んでも有になるはずや」。返答に窮した私はそれ以来、霊界のことを深く考えるようになったのです。

モーツァルトの死生観は「死ぬことと生きることは大して違わないのだ」とか。死とは、日常から肉体が消えること。彼の「クラリネット協奏曲」など、時空を超えた安らぎを感じます。

私は次第に「キリスト教も仏教も神道も真理は同じだ」と思うに至りました。日本人は太古の昔から「氣」を尊び、お社を建て、エネルギーの循環を体得してきたのです。この循環型精神こそ世界に誇れる日本の美徳ではないでしょうか。石油は使えば減るけれど、氣のエネルギーは呼吸するだけで無限に手に入ります。見えないものに想いを馳せてこそ、科学する心も養えるのでは・・・。