「現代のことば」<10>

世界的に見ても、日本人ほど語呂合わせの好きな民族はほかにありますまい。数字の言葉変換のうまいこと!

 

4126・・・良い風呂

1129・・・いい肉

5489・・・ご予約

0983・・・お悔やみ

 

電話番号に始まり、クルマのナンバーや歴史年号に至るまで、数字を充て込んだ文章を作る才能に長けています。

 

794年・・・鳴くよ鶯、平安京。

894年・・・白紙に戻す遣唐使。

1573年・・・以後、涙の室町将軍。

 

ポケットベルがあった頃には、数字だけで会話する人が結構いましたよね。外国では考えられないこと。

 

いや、外国にもあることはあるんですよ。韓国語は数字と言葉が重なりやすいし、英語でも例えば円周率の数字に単語の文字数を重ねる方法があります。

 

May(3) I(1) have(4) a(1) large(5) container(9) of(2) coffee(6) right(5) now(3)?

 

よく考えられていますが、この文章ではすぐに数字に戻しにくいですよね。その点、日本語は実に簡単。

 

・・・人並みにおごれや

・・・富士山麓オウム鳴く

 

日本人の語呂合わせ好きはどこから来ているのか。私は日本語の性質に起因しているように思うのです。漢字に音読み・訓読みがあるように、数字にも「ひぃふぅみぃ」と「イチニィサン」の二通りの読み方があります。“0”に至っては「零」「ゼロ」「オー」「輪」「丸」と読めるので、バラエティー豊かな表現が広がったのではないでしょうか。

 

かつて私は彼女に振られた時、タレントの松尾貴史さんが私の電話番号(453・2914)を見るなり、「洋子さん憎いよと読めますね」と言ったことから、その後しっかり家庭を持った今でも、その番号が頭から離れません。

 

京都の人は、数字にとどまらず、通り名にも語呂を合わせました。

 

「丸竹夷二押御池、姉三六角蛸錦、四綾仏高松万五条」

 

リズムが良いので、すぐに覚えてしまいます。

 

訊けば、「語呂」は雅楽に由来する言葉なのだとか。雅楽における曲の調子を「律呂(りつりょ)」または「呂律(りょれつ・ろれつ)」と言うとのこと。「呂律が回らない」とは、今では舌が回らぬ時に使いますが、元来は演奏が合わない状態のことを指すのだそうです。そこから派生して、言葉に調子を云々する「語呂」が生まれたのだとか・・・。どうも、“語呂合わせ”は京都人の発案であるような気がしてまいりました。

 

さあ、酉年の始まりです。2017年はどんな年になりますかな。

 

「二羽、一鳴き」

「匂う、一菜」

「荷、負いな」

「庭、一畝分」

「ハタチ、いーな」

 

皆さん、元気に楽しく過ごしましょう!