小米朝流「私的国際学」<25>(2001年6月30日)
雪印乳業による集団食中毒から一年が経過――。去年の6月30日は〝雪印〟で覆われた。すぐに騒ぎは収まるかと思いきや、なんと二週間後には「イメージ回復は困難」との見出しが付けられた。
確かに、雪印の管理体制はずさんだったし、当時の社長の対応もまずかった。が、ここまで叩かれるべきものだったのか。
というのは、1万人以上が感染したとされるが、私の知り合いには一人いただけ。講演先でも、「皆さんの家族・親戚・友人・その友人で発症した人がいる方、手を挙げてください」と毎回尋ねたが、100人に一人いるかいないかだった。
そのうえ、発生場所は二転三転した。
だが、もはや庶民感情は原因などどうでもよかった。雪印不買運動が起こり、店頭から全商品が消えた。赤字決算が確実となった9月末、「雪印・ネスレ提携検討」という記事が出て、私はハッとした。結局、外資系主導による合弁への道だったの・・・。実際、今年の2月には合弁会社ネスレ・スノーを設立し、ネスカフェの名前を冠にした商品が発売され始めた。カフェ・オ・レ、コーヒーゼリー、ヨーグルトなどが雪印の工場でネスレの商品管理システムを導入して作られている。
ただ、去年の夏は二企業間の問題だけでは終わらなかった。連日、「食品の中に蚊」「トカゲの尻尾が出てきた」「生きたアリ40匹」などと書き立てられた。その結果、食品会社は「万が一にも虫が混入したら死活問題になる」と、防腐剤・消毒剤を増加した。虫も食わぬものを人間が食べるのって、身体にいいの?
もちろん衛生管理は大事だが、私自身、か弱い菌に打ち勝つ体力と、腐り具合を肌で感じる目を養いたいものだ。