小米朝流「私的国際学」<32>(2001年9月1日)
語学番組に芸人が出るようになるんだから、世の中分からない。ご存じの方もおありだろうが、今年の春から私はNHK教育テレビの『ドイツ語会話』に出演している。
私ごときが使われるようになったのは、イタリアブームに起因する。イタリア料理の人気が高まる中、『イタリア語会話』が大ブレーク。何と言っても、大学教授が登場しないスタイルにド肝を抜かれた。明るく陽気なラテン系のノリに、語学に関心のない人が見るようになった。
この現象に各国語が触発されて、ハングルに神野美伽さん、フランス語に井川遥さん、そしてドイツ語には私が採用された。
出るからには、私も落語家の端くれ。「ドイツ語会話をお笑い番組に!」という精神で張り切った。好評を博するものと思いきや、第1回放送終了時から非難のメール、FAXの嵐・・・。
「今年度の生徒役は騒がしい」「あいつがしゃべりすぎるから、ドイツ人の発音が聞き取れない」「番組が終わっても耳障りな関西弁が頭にこびりついて、夜も眠れない」
知らなかった。全国至る所に、こんなにたくさん静かに勉強しようとしている人がいたなんて・・・。私は少し反省しながらも、相変わらずにぎやかに進めている。だって、固い分野であればあるほど、そこには〝笑い〟が必要だもん。それこそが国際交流の潤滑油だと信じている。
おかげさまで、最近はファンレターがうんと増え、なんと、9月の毎土曜日の深夜に4本ずつまとめて再放送されることが決定した。先日、中国後の夏期講座に、亀ちゃん(亀山房代)が司会役で出演しているのを発見。ひょっとして、お笑いの精神が語学番組に浸透しつつあるのではないか。
外国語を習得することは、実は難しい。でも、まずは興味を持つことが肝心。言葉に触れることって、その国の文化を知る一番の近道だと思うから。