小米朝流「私的国際学」<33>(2001年9月8日)
「株価下落を止めるため、多額の国債発行を」という論調が再び頭をもたげてきた。私に言わせりゃ「アホなことぬかすな!」である。
そもそも、日経平均株価が1万円を割って生活に影響が出る人って誰なの?われわれ庶民は変わらないよ。困るのは一部の金持ち(株価を操作できる人)だけだ。
実はずっと売り浴びせてきた外国人投資家は先月から〝買い越し〟に転じている。ここが底値とばかりに買っている。だが、株価は上がらない。なぜか。日本の銀行が、持ち合い株の解消にむけて、どんどん売っているからである。不思議な現象だ。現在、株を買い支えられる日本企業は皆無に近い。ということは、無理に株価を上げる必要はないんだよ。この数値こそ、実体のある経済となった証(あかし)ではないか。
このジレンマに彼らが耐えられなくなって、今月、国際通貨基金(IMF)を日本の銀行に介入させてきた。つまりは、日本主導の運営に国連(連合軍)が終わりを告げたのだ。
思えば、1945(昭和20)年8月15日の敗戦の日から、IMF主導で日本再生が始まった。固定相場制のおかげで大きく築き上げた富を、変動相場制で見事に持っていかれた。プラザ合意によってバブルが作られ、そして壊された。1980(平成2)年2月21日、第二の敗戦記念日である。これからまたIMFの傘下に入る。
良くも悪くも、この国は外圧によってしか変わらない。10年が経過し、ようやく問題を直視する内閣が誕生した。連合国の指導は日本に不利なものが多かろうが、どうか小泉首相には「和して同ぜず」の気概を持ちつつ、改革を断行していただきたい。
IMFの銀行審査が完了する2005年ごろまでに、国民が痛みを肌で感じ、株価や為替に踊らされない哲学を学ぶことができたなら、日本人の意識構造改革の成就となる。それこそが、次世代にこの国を託す大人たちの使命でもあるのだが。