桂小米朝の「新・私的国際学」<8>(2003年5月25日)

経営悪化により、政府から2兆円以上の公的資金を受けることになったりそな銀行。今回の措置で、りそなの自己資本比率はBIS(国際決済銀行)基準の8%を大きく上回ることになる。

これではっきりしたね。銀行はつぶれないということが…。たとえ名前が変わったとしても残るのだ。「だから銀行さんよ!中小企業をもっと救済してえな」。こう思うのは私だけだろうか。

大手銀行のおえらいさんは、「借り手のニーズがないんです。おカネを回したいのに、借りてくれません」と口を揃える。

果たしてそうなのか。私が耳にする巷の声とは全然違う。担保不動産価格の下落のため、銀行からの貸し渋りに遭っている人が山ほどいる。そのため、地方自治体が設けた中小企業向けの融資制度で何とかしのいでいるのが実情だ。

「もう銀行なんて要らんやん。BISの意のままに融資基準を引き上げたんでは、借り手が無くなって当然や」

ひとり憤慨していたとき、テレビ朝日の「サンデー・プロジェクト」が、東京都多摩市にある多摩中央信用金庫を紹介した。

ここは、自己資本比率が下がっても気にせずに、積極的な融資を実行している所。起業家を支援する特別融資「ブルーム」や、企業再生に向けての融資「ウイン」などの制度があり、地域のために貢献した企業や団体を表彰する「多摩ブルー・グリーン賞」まで作っている。

すべて新理事長の佐藤浩二氏のアイデアだとか。ヘッドが変われば、銀行も変えられる。残念ながら、私はここまで元気を与えてくれる金融機関をほかに知らない(あったら教えて!)。

今の時代、自己資本比率の高さを自慢するより、地域の人たちに慕われる金融機関であるほうがずっとカッコいいよ。

それにしても、日本政府はなぜ銀行ばかり救済するのかな…。