桂小米朝の「新・私的国際学」<11>(2003年6月15日)
「財産税」「預金封鎖」、こんな言葉が雑誌に載り出した。4月下旬の「週刊ポスト」に始まり、今週は「週刊現代」や「SAPIO」にも登場した。
700兆円ともいわれる国の借金を、1400兆円に達する国民の個人資産から奪取して、チャラにしようという財産税の導入。税率は20%とも30%とも噂されている。来年(2004年春)の紙幣刷新の時期に合わせて実施するとね・・・。
例えば「3月1日をもって、今の紙幣は使えなくなる」と発表し、国民が金融機関に預けたところで、その資産に税金をかける。また、手持ちの旧紙幣を新紙幣に交換するときには手数料という名目で取られてしまう。
「実際、そこまではせえへんやろ」と反論する人もいるだろうが、日本には前例がある。昭和21年、GHQ(連合国軍総司令部)の管理下で、ときの政府は新円切り替えと預金封鎖を実行した。当時の財産税の税率は25~90%。ハイパーインフレを誘発し、国と銀行の借金を帳消しにした。
1985年から1990年に至るバブル経済によってもたらされた今回の〝第二の敗戦〟。官僚機構を温存したまま国を救うには、この手法しかないのもまた真なり。小泉首相が言う「痛みを伴う改革」の中身が見えてきた。国際金融財閥の手先となって働くエリートたち。「所詮、われわれは彼らの領民である」という意識を持とうではないか。
彼らは実にスマートに計画的にコトを運ぶ。昨年8月2日に日本の紙幣刷新を発表して以来、8月5日に住基ネットを稼働させ、銀行には「名寄せ」と称する個人財産管理を推進させ、ATMのメーカーには新札への対応準備を今年の11月までに完了するよう要請している。
ユーロやドルに換えて所持してもほとんど意味がない。唯一の庶民の抵抗は、新札発行の予定がない、二千円札でタンス預金をしておくことだ。これとて、不人気を理由に使用停止にされたらおしまいだがね・・・。