桂小米朝の「新・私的国際学」<23>(2003年9月21日)
先般、NHK『イタリア語会話』の講師であるダリオ・ポニッスィーさんとオペラ談議で盛り上がった。
やはりオペラはイタリアが本場で、なかでもヴェルディ(1831-1901)とプッチーニ(1858-1924)が偉大なる作曲家の双璧だという点で意気投合した。二人の作風は正反対。浄瑠璃に例えると、時代物と世話物ほど違う。時代物を得意とするヴェルディに対し、現代の悲劇を美麗に奏でるプッチーニ。が、どっちが好きかとなると、意見が分かれた。ヴェルディ派のダリオさんと、プッチーニ派の私。
私がプッチーニを推す理由はこうだ。「登場人物の感情がそのままメロディーになっています。『ボーエム』や『トスカ』などは、旋律を聴くだけで泣けてきますし、『西部の娘』『蝶々夫人』『トゥーランドット』などは異国情緒たっぷりですもん」
それに対し、ダリオさんはこう切り返した。「旋律を云々するなら、ヴェルディには『椿姫』があります。彼はそれ以上に人間の根本的な宿命を追求したのです。『リゴレット』『運命の力』『オテロ』・・・、どの作品にも自己犠牲により他人を救おうとする雄々しさが描かれています。その最高が『アイーダ』ではないでしょうか。そもそも、18歳のプッチーニがヴェルディの『アイーダ』を観て作曲家になる決心をしたのです」
私は急に『アイーダ』が観たくなった。折しも今年、日本はアイーダばやり・・・。ミュージカルにもリメイクされている。宝塚歌劇が7月の大劇場公演に引き続き、現在は東京で公演中。劇団四季も12月に大阪MBS劇場で幕を開ける。オペラも負けてはいられない・・・と思いきや、やっぱりオペラ、凄いのが大阪にやってくる。ドイツのマグデブルク歌劇場が初来日!今年は『アイーダ』が見逃せない。
いとしい人のために命をも惜しまぬ究極の人間ドラマ――これぞ愛だ。