2010.10.10 「入院、そして経過のご報告②」

2010年10月4日午後3時半、私は泰然とした気持ちで手術用のベッドに横たわり、手術室に入りました。執刀するのは私の主治医である片岡先生。体育会系の風貌で、俺に任せといたら大丈夫的な空気を出しておられます。やはり、外科医にはこの空気が似合うよなぁと一人感心していると、横では助手のお二人が私のレントゲンの写真を見たり、笑談したり、ウロウロしながら準備をしておられました。その雰囲気が落語会の舞台袖で先輩に付いて勉強している若手芸人そっくりなのです。顔はというと、一人はボーッとしている時の香川真司、もう一人は春風亭昇太似のお医者様。執刀医の横で勉強兼お手伝い…。ホンマに落語の世界とよう似てます。師匠と弟子の関係に。堂々とされた執刀医の上には、さらに大先生が控えておられますしね。

あとは、手術室専用の女性看護師さん二人。寄席に例えるなら、さしづめ三味線奏者でしょう。どちらも美人でフレンドリー。その内のお一人が「私、こないだ落語会でお噺を聴かせていただきました」。「え~っ、そうなんですか! いつです? はいはい(^-^)」と、身体はベットに固定されながらも、顔は急に営業スマイルに。

一方、執刀の片岡先生は、「私は全然知らないんです。はぁ…あ、名前が変わったんでしたね。べぇだんじさんでしたっけ」。もっと売れなあかんなぁ…と思いながらも気を取り直して、悠然と「私こそ手術は小さい頃に一度しただけで、初めてのようなもんですけど、手術室って明るい雰囲気なんですね」と言うと、看護師さんが「そうですよ。CDもかけられるんですよ」と音楽をかけ出した。「いろんなCDがあるんですか?」「はい、ポップスからクラシックまで。あっ、落語は置いてませんわ」「じゃあ、今度持って来ます」と、調子の良いことを言いながらも、はて、手術を受けながら聴く落語って何がええんやろう??? と思っている内に、「はい、じゃあ、下半身麻酔を打ちましょか」と先生の声。「はい、お願いします」「手術の間、どうしましょ? 寝ますか、それとも起きときます?」「起きときますわ。そのほうがネタになるし」「ネタ! ネタになるて・・・」。このへんの突っ込み加減は、さすが関西人。ひと通り和ましていただき、麻酔が打たれました。午後4時開演・・・ではなく、開始です。

麻酔とはいえ、下半身なので、いろんな話が聞こえてきます。私は心の中で「左足の親指の中がどんな状況であれ、それが自分に与えられた定めだから、素直に受け入れよう…。でも、骨の切除はなるべく少なくて済みますように」などと、いろんなことに想いを巡らしながら、泰然と構えていました。あとで聞いたことですが、私は笑顔をキープしていたつもりでしたが、かなり緊張していたそうです。

麻酔が効いているし、寝てるので、自分で感覚は掴めなかったのですが、看護師さんが状況をやさしく教えて下さいます。で、いよいよ骨の所まで切り開いた時、執刀の片岡先生が。

(次回に続く)