2011.07.24 「相国寺で“地獄”」

二日続けて、異色な落語会に行きました。


23日は久しぶりに大阪・天満天神繁昌亭の朝席に出演しました。朝太郎兄さんが世話役となっての朝席。午前10時から誰が聴きに来るねんと訝しんだのは昔の話。最近は定年を迎えた世代がカップルで、或いは家に居ると邪魔者扱いされがちなお父さんが一人で、はたまた子育ての終わったご婦人がお友達と一緒に来られることが多くなりました。この日は和装のお客さまが沢山おられました。訊けば、二番目に出演の雀太くんのお客様だとか…。彼のお蔭で客席は満員。雀太、おおきに! 彼は雀三郎兄さんの一番下の弟子。あそこは上から雀喜・雀五郎・雀太の順ですが、どう見ても雀太・雀五郎・雀喜の順に兄らしく映る不思議な一門です。それはさておき、この日の客席、皆さんよく笑って下さいました(^0_0^)

『つる』團治郎

『遊山船』雀太

『豊竹屋』米左

  〈中入〉

「お笑い手品」朝太郎

『青菜』米團治


 そして翌24日は、京都に向かいました。上京区の相国寺で私の『地獄八景亡者戯(ジゴクバッケイモウジャノタワムレ)』を聴く会が開催されました。現在(9月11日まで)相国(ショウコク)寺の承天閣(ジョウテンカク)美術館で、日独交流150周年記念「ハンブルク浮世絵コレクション展」が開かれているのですが、私の落語会はその一環。美術館のホールに作られた舞台には当寺の有馬頼底管長が書を認(シタタ)められた屏風が設えられ、それが和みの雰囲気を醸し出し、実に楽しく落語を演じることができました(^0_0^)


『子ほめ』二乗

『地獄八景亡者戯』米團治

お寺での“地獄”は妙にリアリティーに富みますね。一番笑いを呼んだのは「桂米朝…近日来演」でもなく、「YKB48…焼き場系」でもなく、「臨済宗のお寺は…浮世絵が飾ったある所や」でした。鳴物担当の皆さん(三味線=浅野美希、太鼓=二乗、笛=そうば)ありがとう!


多くの方々の協力により落語会は無事終演したのですが、一つ、高座で有馬頼底さんの筆による屏風字を紹介するのを忘れてしまいました。「忘れ癖」は私の十八番とは申せ、有馬管長に「お客様に説明させていただきますので、詳しく教えて下さい」と、事務局長にコピーまで取っていただきながら、それを言い忘れるとは…嗚呼、情けない。そこで、このブログにて説明させていただきます。書の内容は唐代の伝説の詩人、寒山の詩(五言律詩)です。


重巌我卜居

鳥道絶人迹

庭際何所有

白雲抱幽石

住茲凡幾年

屡見春冬易

寄語鍾鼎家

虚名定無益


(山深く巨石聳える所に私は住居を定めた。そこには人間が行き交う道など無く、鳥の道だけが存在する。庭の前には何があるというのだろう。白雲がほの暗い石を抱きかかえるように立ち昇るばかり。ここに住んで、はや何年になることか。冬が去り春が来るさまを何度も見たものだ。ご大家の衆に申し上げるが、空虚な富や名声など全く無益なものでございまするぞ。)


有馬管長は、翌25日に東日本大震災における被災地復興の義援金を持って、福島県に行き、福島県知事にお会いになるとのこと。これは空虚にあらず、充実です。有益な実を結びますように☆☆☆

 
楽屋にて有馬頼底さんとツーショット。