2012.04.02 「いせまるさんの朗読の会」
寄席三味線の大川貴子さんによる朗読の会を聴きに行きました。見事でした。素晴らしかった!
大川さんと言えば、上方落語・寄席囃子の三味線奏者の一人でして、私も普段から色々とお世話になっています。実は彼女、劇団「前進座」の出身なのです。舞台女優として研鑽を積んで来られただけあって、落語以外の古典芸能にも明るい方でいらっしゃいます。でも、朗読まで勉強していたとは…。
で、朗読の時の名前が「いせまる」。実は彼女、新内も習っていて、人間国宝の鶴賀若狹掾さんが伊勢太夫を名乗っていた時に入門し、戴いた芸名が鶴賀伊勢丸。そのため、朗読の時は「いせまる」という名前で出ているんだとか。今回の読み物は小松左京作『明烏』。「へぇ~、小松先生ってそんな小説書いてはったん!?」 恥ずかしながら私は、昨年の夏に他界されたSF作家、小松左京さんの作品に『明烏』という小説があることすら知りませんでした。
ご承知の通り、『明烏』は新内の『明烏夢泡雪』をもとに歌舞伎や落語にもなった江戸・吉原の廓噺の代表作です。それを生前、小松左京さんが小説にされたんだとか…。
いせまるさんは、まず新内『明烏夢泡雪』を語った後に、小説『明烏』を朗読で披露。
全て読み切ると一時間以上かかる作品を、いせまるさんは一瞬たりともお客を退屈させることなく、穏やかに伸びやかに口演。しばし幻想的なお芝居の世界にドップリと浸ることができ、とても幸せな気持ちになりました(^ー^)
同時に、私は小松左京さんの偉大さを改めて感じました。小説『明烏』は、川端康成よりも官能的で、三島由紀夫よりも耽美的…日本の純文学作品としてもっと称賛されるべきものではないかと思いました。尤も、これはいせまるさんの技量による所が大きいのかもしれませんが(^-^ゞ
朗読を成功させた要素の一つに、会場の良さがあげられます。大阪市中央区谷町六丁目の町家をそのまま利用したギャラリー「練」の二階和室。空堀倶楽部が運営するなごみの空間です。開演したのが午後5時。朗読が進むにつれ、夕陽が傾きはじめ、障子に絶妙のシルエットを作ります。夢の中で進む男女の交接のシーンで急に風が舞い、硝子窓をガタガタ鳴らせたのには心底驚きました。
空堀商店街がすぐそばにあるこの界隈は、大阪の街なかでありながら、どこか郷愁を感じさせてくれる所。たまにフラッと散歩したくなります。そんな時、いせまるさんの朗読が聴けたら…最高ですね(^0_0^)