2012.10.07 「アクシデントを乗り越え…、生涯忘れ得ぬ独演会に!」
6日(土)の神戸朝日ホールでの「桂米團治独演会」は、生涯忘れ得ぬものとなりました。
おしゃれな街、神戸・元町での独演会はまだまだ歴史が浅く、これからもっともっと宣伝して行こうと思っている落語会です。それでも、この日は満員とはならなかったものの、500席の会場に約400人のお客様が詰めかけて下さいました。そして、全員陽気でした(^ー^) 前座の米輝からバカ受け! 私の一席目は『鷺とり』──。実は、あまり自信がなかったのですが、これがまたよく受けました!! 続いてのあさ吉君も上手く繋いでくれ、すっかり気をよくした私は、二席目『たちぎれ線香』のマクラを朗々と振り、ネタに入った瞬間──、中程に座っておられたお客さんが口から泡を吹き、苦しみ出されたのです。
(フロントライトで左右から舞台を照らしている時は客席が見えにくいのですが、今日は主に天井からのライトで照らしていたので客席がよく見えて助かりました)
当然、その席の周りの方々はざわつき出します。もう落語などしている場合ではありません。「お客さんが一人、倒れられました。係りの方、客席に入って下さい!」と高座からスタッフに向けて言いました。すぐに、客席の照明は明るくなりました。すると、これも当然のごとく、お客さんは倒れた人の方に視線を送ります。私は「どうぞ皆さん、ご心配なきよう。こういうことは落語会では…あまりありません。いや、私の長い噺家人生の中でも、初めてのことです」と、取りとめのない言葉を発していました。でも、お客様がとても温かくて、「頑張れよ」という思いからか、私の一言一言に拍手や笑いを下さいました。
が、その時、客席から「はよ救急車呼ばなアカンがな」の声。「あ、そうですね。早く救急車を呼んで下さい!」と、私は再び高座からスタッフに向けて叫びます。客席には主催者のスタッフや私の弟子の團治郎や慶治朗が駆け付けて、介抱に当たります。
でも、ほかのお客様に緊張を高めさせては行けません。そこで、私は「神戸の皆様は、こういうアクシデントは地震で慣れておられるはずです。あの地震が起きてまもない頃、米朝はあえて地震の小咄をしたんです。今、それを披露します」と言って、新婚夫婦の初夜の話が題材になっている小咄をしたところ、何とか受けました。「この際、男女の色気のある話をしましょか」と言って、軽い艶笑小咄を喋り、笑いと拍手を繋いでいる頃、車椅子が到着し、ほどなくそのお客さんを外へお連れすることができました。
(後で判ったことですが、あの吉川マネージャーが辺りを探し回り、車椅子とAEDを持って来たんだそうです。決して、パチンコ屋で時間を潰していたんではありません。また、そのお客さんも大事に至りませんでした。どうやら、この三人の内の誰かの落語にあたったみたいf(^^;)
約15分の中断の後、『たちぎれ線香』を再び演じることになりました。果たして大丈夫かなぁと少し不安になりましたが、逆に舞台と客席の間に、ある種の連帯感が生まれ、かなり心の籠った『たちぎれ』を披露することができました☆☆☆ ありがとうございました(^人^)
(これも後から判ったことですが、客席に歯科医師の方がおられ、救急車が到着するまで、患者さんの傍で脈を取るなどいろんなケアをされていたそうです。誠にありがとうございました!)
休憩後の『くしゃみ講釈』は正に舞台と客席が一体となって進んで行きました☆☆☆
そして、大きな拍手とともに幕が閉まる時──、なんと大道具の書き割りが何かにひっかかって倒れ、ドスンという音とともに、幕の下から客席側にはみ出してしまったんです。
再び、お客さんのどよめき…。仕方ありません。私は閉まった幕の外へ出て、事情を説明。またまたお客さんから大きな笑いと拍手をいただきました\(^o^)/ そして、「落語会でカーテンコールをいただいたのは初めてです」とオチを付けました(^o^ゞ