2021.05.23 《「落語議連」の会合に参加して感じたこと》
新型コロナウイルスの拡散により落語会の本数が少なくなった分、一つの公演に懸ける思いがうんと強まりました。
今月16日(日)に愛知県豊田市で開かれた独演会は、能楽堂での開催。名鉄 豊田市駅前にあるこの建物は「豊田参合館」と言って、図書館や能楽堂やコンサートホールなど沢山の文化施設が集約されているのです。さすがTOYOTAのお膝元!
https://www.yonedanji.jp/?p=17790
コンサートホールでは五年前に「狂言オペラ」で『コシ・ファン・トゥッテ』を上演! 落語会もこれまで豊田市内のさまざまな会場で開いてまいりました。でも、能楽堂での落語会はまた格別! 大きさといい、音響といい、落語にもってこいです。
お客様方の陽気な笑い声に包まれて、大いに盛り上がりました(^o^)
また、21日(金)に京都国立博物館で開かれた「らくご博物館・春」も、温かいお客様の眼差しに支えられ、楽しく演じることができました(^-^)
最近、ふと疑問に思います。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出されている都道府県下でも、舞台公演ができる所とできない所が並列している不合理を…。府立や市立の文化ホールは閉められているのに、国立のホールは開いているのです。
そんな中、先日、衆議院の議員会館で「落語議連」の会合が開かれました。「落語議連」とは「落語議員連盟」の略語で、正式名称は「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会」。今から三年前に、落語好きの代議士の方々が超党派で結成された会です。会長は山形県出身の遠藤利明さん。文化の継承の大切さを心得ておられる方でいらっしゃいます。
https://toyokeizai.net/articles/-/250993
今回は代議士の先生方がコロナ禍での落語界の窮状を諮問すべく、噺家や寄席の席亭、芸能プロデューサーが招かれました。宮内秀樹さんの司会により、議事が進行。私も、上方落語協会の副会長として、協会の運営がかなり厳しい状況にあることや、政府と一部の地方自治体の考え方にかなりの温度差があることなどを話しました。
https://readyfor.jp/projects/yose
ちょうど、東京の落語協会と落語芸術協会が手を携え、江戸から続く寄席文化の灯を絶やさぬための「落語クラウドファンディング」を立ち上げたところだったので、会議全体としての話題がそちらに集中していったのですが、その時、八木哲也さんが「もちろん寄席は大切ですが、噺家の皆さんは全国を回っておられる。それぞれの地方ごとに興行師さんがおられ、今、大変だと思います。急に中止と言われたら、その手続きをしないといけないし、公演日までのスタッフの感染防止対策は生半可なものじゃありませんよ。全国で落語をプロデュースしている方々のご苦労にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。落語家さんに訊きたいが、寄席と地方公演の割り合いって、どの程度なんですかね」と発言されました。
私は、ハッとしました。そうや…確かに寄席は落語文化の象徴であり、寄席を守ることは噺家の矜持なのだろうけれど、落語がここまで普及したのは噺家が全国津々浦々で落語会を開いてきたからであり、すなわち落語会開催に向けての世話をして来られた人達のお蔭や! はっきり言うて、噺家の大半は地方公演で稼がしてもらってるんやからなぁ。大きなことを忘れるところでした。八木さん、ありがとうございました。私は、その席で「寄席が大切であるのと同じだけ、全国の落語会の運営も大切である」ことを申し上げました。
また、その場では言いそびれてしまいましたが、この度の「コロナ禍」により、昨年から神社・仏閣、街のお蕎麦屋さんやお寿司屋さんで開いてきた落語会が、殆んどすべて余儀なく中止に追いやられたままです。この手の会場は、市民会館や文化ホールではないので、空調設備も万全ではなく、感染防止対策云々を問われると、一溜まりもありません。でも、実はこういった方々が(儲けなど度返しで)落語を盛り立てて来られたのです。それぞれの地域に「落語」を根付かせて下さったのです。この問題の解決が今後の課題であることに気づきました。
いずれにせよ、落語をきっかけとして舞台芸術の重要性について発言の場を与えて下さった「落語議連」の皆様に感謝申し上げます。そして、「落語クラウドファンディング」に(目標金額を遥かに上回る)ご寄付を下さいました寄席ファンの皆様に篤く御礼申し上げます。今回、上方落語協会は天満天神繁昌亭が作られた経緯など立場の違いからクラウドファンディングには参加しておりませんが、「寄席文化の灯を消してはならぬ」という気持ちに変わりはありません。今後とも落語界の繁栄のため、ご協力を賜りますよう、宜しくお願い致します🙏
追伸:一部地域の自治体の長の方々へ。落語や歌舞伎やコンサートなどの舞台公演においては、お客様の観覧による感染事例は一件も届いておりません。今後とも感染防止対策を万全に実施してまいりますので、6月以降、たとえ緊急事態宣言が解除されなくても、日本政府の指針通り、有観客公演を認めていただきますよう、切にお願い申し上げます🙇♂️