2021.08.28 《コロナ禍の独演会に思うこと》

先日、落語会のお客様から次のようなツイートが寄せられました。

———札幌・道新ホールでの独演会、お疲れ様でした‼︎ 昨夜は『淀の鯉』『はてなの茶碗』『地獄八景亡者戯』と続き「もう十年は来ない気かな⁈」と同僚と噂になりました。タイムリーな時事根多満載の「地獄めぐり」も9時ぴったりに収まり、とても楽しい大満足の会でした👏👏👏———

と、身に余るお褒めの言葉を頂き、面映いながらも嬉しいかぎり(^◇^;) いや、この方が仰るのは「大ネタを三つ出したということは、もう札幌には当分来ないつもりなのかなぁと、勘繰ってしまう」と。「まさかまさか。そちらさえ宜しければ、これからも定期的に伺います」と返事をしかけて、ハタと気づきました。実は「これが最後になってもよい」と思いながら演目を決めていたのではないのか…と。

よく考えてみたら、そうでした。去年からのコロナ騒動で落語会は延期や中止の繰り返し。神社仏閣での落語会は悉く二年続けて中止となっているのです。果たして、次の落語会も実施できるのだろうか。いや、開催できたところで、お客さんが来て下さるのだろうか。そんな不安を払拭するための方策として、知らず知らずのうちに「今、自分ができる最高の高座を企画しよう」という気持ちになっていたようです。

直近の独演会の演目を振り返ってみると———。

【7/22  サンケイホールブリーゼ】

 『田楽喰い』『千両みかん』『質屋芝居』

【7/24  銀座ブロッサム】

 『稲荷俥』『たちぎれ線香』『質屋芝居』

【8/9  芦屋ルナホール】

 『桃太郎』『千両みかん』『地獄八景亡者戯』

【8/25  札幌・道新ホール】

 『淀の鯉』『はてなの茶碗』『地獄八景亡者戯』

なるほど、自分で言うのも何ですが、三席ガッツリと並べていますね(^◇^;)

どうやら「これから舞台芸術はどうなってしまうのだろう」という危機感が番組構成に大きな影響をもたらしていたようです。

振り返って考えてみるに、私がこんな気持ちになったのは昨年の「米朝まつり」を実施した時からのような気がします。

昨年3月に予定されていた桂米朝没後五年の落語会がコロナ感染の第一波により中止となり、スタッフの「今年は辞めましょう」という声に逆らい、その年の8月に強引に開催した私。拍子の悪いことにコロナ第二波がやってきて、万事休す…となった時、さだまさしさんの言動に勇気づけられたのです。

実は、「米朝まつり」の開催日が迫ってきたにも拘らず、コロナ騒動で前売券の売れ具合がピタッと止まってしまった時、なぜか私、さだまさしさんに電話したのです。何故だか理由はよく分かりません。滅多に電話しないのに…。たぶん、昔から落語好きでいらっしゃって、桂米朝の追善興行の時も南座にご出演いただいたことを思い出したからでしょうか。

藁にも縋る思いで電話したところ、なんと直ぐに出られたのです! ドギマギしながら私が心の内を話すと、「今、大変ですよね。ちょうど良かった。あさって、NHKの『生さだ』があるので、そこで告知させていただきます。メールで詳細を送って下さい」との回答。私は溢れ出る涙を止めることができませんでした。

『生さだ』放送の翌日、主催のサンケイホールブリーゼのスタッフから「何故だか分からないけど、急にチケットが動き出しました。有難いです」との電話。お蔭さまで「米朝まつり」は盛況のうちに幕を下ろすことができました。感謝感謝です。

後日、知ったのですが、実はさだまさしさんもご自身のコンサートが春からずっと中止続きで、9月からようやく再開できるか…というギリギリの状況だったのだとか。ご自分のことには何も触れず、ただただ「米朝まつり」のことに思いを馳せて下さった行動に、私は「愛」を感じました。大いに魅せられました。もちろん、それまでも「マッサン」のファンであった私ですが、これを機に私は「マッサン命」となりました(^◇^)

それ以来、私は「こんな時期だからこそ、今できる最高のものを提供しよう」という気持ちで演目を決めるようになったのだと思います。

ちなみに、今年のさだまさしツアータイトルは「さだ丼」!https://masasingtown.com/

マッサンの魅力がお椀の中に凝縮されています☆☆☆

私も負けじと、9月の独演会にしっかり臨みます。

 

【9/4  吹田メイシアター】

『青菜』『はてなの茶碗』『三枚起請』